一人にしておくのが不安になったとき

高齢の家族を家に一人で残すことが、以前より心配に感じられるようになると、家族は短い外出でも落ち着かなくなります。転びそうになった、火を消し忘れた、電話に出られなかった、薬を飲んだか分からなくなったなどの出来事が重なると、「買い物の間だけなら大丈夫」と思いたくても、家を出た後まで気がかりが残ります。

家族にも仕事、買い物、銀行、役所の手続き、子どもの予定、自分の通院があります。それでも「その間に何かあったら」と考えると、用事を後回しにしたり、急いで帰宅したり、外に出ていても電話ばかり気にしたりするようになります。

本人は本人で、「一人で大丈夫」と言いたい気持ちがあるかもしれません。家族から細かく声をかけられると、心配されているというより、自分を信用してもらえていないように受け取ることもあります。

この記事では、高齢の家族を一人にしておくのが不安になったとき、家族が不安を抱えたまま我慢し続けるのではなく、どの心配から手をつけると外出中の緊張を少し減らせるかを考えていきます。

不安の中身は、落ち着いたときにメモで書き出してみる

一人にしておくのが不安なとき、家族の頭の中では、転倒、火の元、薬、電話、外出、トイレなどの心配が一度に浮かびます。その最中に「何が不安なのかを整理しましょう」と言われても、簡単にはできません。

外出前は時間に追われますし、本人が「大丈夫」と言い張ると、家族はそれ以上言いにくくなります。結局、心配を抱えたまま出かけるか、予定を取りやめるかの二択になり、家族の生活が少しずつ狭くなっていきます。

不安の中身は、その場で無理に整理しなくてもよいと思います。買い物から戻った後や、本人が眠った後に、「今日は火の元が気になった」「電話に出なかったのが怖かった」「トイレに間に合うか心配だった」と、思い当たることを一つだけメモしておくと、次に外出するときの準備を変える手がかりになります。

家族が気になる様子 留守中に心配になること 外出前にできる工夫
歩くときにふらつく トイレや玄関で転ぶ 出かける前にトイレへ誘い、床の物やコードを片づけます。
火を使ったことを忘れる コンロ、鍋、やかんの消し忘れ 留守中に火を使わなくて済むよう、食べ物や飲み物を用意します。
薬を飲んだか忘れる 飲み忘れや二重服薬 その時間に飲む分だけを出し、残りの薬は家族が管理します。
玄関から出ようとする 近所へ出て道に迷う 本人が行きたがる理由を聞き、連絡先カードや玄関まわりを整えます。
電話に出られない 家族が連絡しても状況が分からない 電話の場所を固定し、出られないときの確認方法を決めます。

留守番の時間は、短い外出から様子をつかむ

一人にしておくのが不安になったとき、すぐに「もう一人にはできない」と決めると、家族の生活は急に立ち行かなくなります。反対に、これまで通りの長い外出を続けると、家族は外出中ずっと落ち着かないまま過ごすことになります。

最初に試すなら、近所の買い物やごみ出し、短い用事のように、戻る時間が見えやすい外出から考えます。「30分で戻ります」と伝えて出かけ、戻った後に火の元、薬、トイレ、電話、本人の表情や落ち着き方を確かめます。

何も起きなかったかだけで判断すると、家族の感覚が置き去りになります。本人が何度も電話をかけてきた、玄関の鍵を触った跡があった、帰宅したときに強く不安がっていたなど、家族が「これは気になる」と思ったことも、次の外出時間を決める材料になります。

短い外出でも毎回強い不安が残るなら、買い物は配達に替える、銀行や役所の用事は別の家族と分担する、外出時間を本人が落ち着いている時間帯に寄せるなど、留守番そのものを少し短くする工夫も必要になります。

火の元と水まわりは、出かける前の段取りに入れる

留守中の不安で大きいのは、火の元です。本人が料理をするつもりでコンロを使い、鍋をかけたまま忘れてしまうかもしれないと思うと、家族は短い外出でも気が休まりません。

外出前には、コンロのつまみ、ガスの元栓、電気ポット、ストーブ、アイロン、たばこなどを家族が一度確かめます。本人が台所へ立ちたくなるなら、留守中に火を使わなくて済むように、お茶、飲み物、すぐ食べられる軽食を手の届く場所に置いてから出かけます。

水まわりも同じです。蛇口を閉め忘れる、浴槽に水をためたまま忘れる、洗濯機を途中で触るといった心配があるなら、出かける前に水を使う用事を済ませておきます。本人の行動を強く止めるより、家族がいない時間に触らなくて済む状態を作ってから外出するほうが、本人にも家族にも受け入れやすい形になります。

転倒が心配な場所は、本人が通る道から片づける

家族がそばにいるときなら、立ち上がりや方向転換でふらついてもすぐ手を貸せます。一人のときに転んでしまうと、本人がしばらく動けないままになる心配があり、家族は外出先でもそのことが頭から離れなくなります。

留守中に本人が通る場所は、ある程度決まっています。居間からトイレ、寝室からトイレ、居間から台所、居間から玄関までの道を中心に、床に置いた新聞、衣類、電気コード、めくれた敷物、足を引っかけそうな小さな段差を片づけます。

本人がよく座る椅子の近くには、リモコン、眼鏡、ティッシュ、飲み物などをまとめておくと、家族がいない間に何度も立ち上がる回数を減らせます。トイレまでの道に暗い場所があるなら、足元灯を置いておくと、夜や夕方の移動で足元を確かめながら歩けます。

出かける前に「トイレへ行っておきましょう」と自然に声をかけることも、家庭で取り入れやすい対策です。本人が急いでトイレへ向かう時間を減らせると、立ち上がりや方向転換で慌てる場面も少なくなります。

薬の時間と外出時間が重なるときは準備を変える

薬を飲んだか忘れる人を一人にしておくと、飲み忘れと二重服薬の両方が心配になります。本人が「まだ飲んでいない」と思って薬袋を探し、もう一度飲んでしまうと、薬の種類によっては体調に影響します。

留守にする時間が薬の時間と重なるなら、その時間に飲む分だけを出しておきます。残りの薬を何日分も本人の手元に置くと、本人が不安になったときに自分で取り出してしまうため、家族が別の場所で管理します。

お薬カレンダーや服薬ボックスを使うと、飲む前と飲んだ後が見た目で分かります。家族が帰宅したときも、本人の記憶だけに頼らず、「昼の薬のところが空になっていますね」と一緒に確かめられます。

飲み忘れたときや、飲んだか分からないときの対応は、薬によって変わります。家族の判断で追加して飲ませると危ない薬もあるため、受診時や薬局で「飲んだか分からないときはどうするか」を聞き、お薬手帳に家族用のメモを挟んでおくと安心です。

外へ出てしまう心配は、理由と連絡手段を分けて考える

本人が家の外へ出てしまう心配があると、家族の緊張は大きくなります。近所を歩くだけのつもりでも、道を間違える、帰る場所が分からなくなる、暑さや寒さの中で歩き続けるといったことが重なると、家族がすぐ気づけない危険があります。

本人が外へ出ようとする背景には、買い物へ行きたい、仕事へ行くつもりになっている、昔の家へ帰りたい、家族を探しているなど、本人なりの理由があります。「出ないで」と強く止めても、その理由が本人の中に残っていると、また玄関へ向かうことがあります。

玄関まわりでは、靴、帽子、杖、鍵の置き場所を確かめます。本人がよく探す物を玄関から離れた場所に置く、家族の連絡先を書いたカードを持ってもらう、近所の人に見かけたときの連絡先を伝えておくなど、外へ出たときに早く気づける工夫を入れます。

行方が分からなくなった経験があるなら、本人の最近の写真、よく着る服、よく行く場所、持ち物、連絡先を家族で共有しておきます。実際に探すことになったとき、家族が慌てながら情報を集める負担を減らせます。

電話やメモは、本人が迷わない量にする

外出中に電話で確認したくても、本人が電話に出られないと家族は不安になります。電話の音に気づかない、受話器を取る前に切れてしまう、スマートフォンの操作が分からないなど、連絡手段が本人の状態に合っていないこともあります。

固定電話を使うなら、本人が座っている場所から手が届く位置に置き、家族の電話番号を大きく書いて貼っておきます。スマートフォンを使うなら、家族のアイコンを一つだけ画面に出す、充電場所を固定する、音量を上げるなど、本人が操作に迷わない形にします。

メモを置くときは、たくさんの注意を書き込まないほうが伝わります。「13時に戻ります」「昼ご飯はテーブルの上です」「困ったらこの番号に電話してください」のように、本人が気にすることだけを大きく書きます。

予定や注意を細かく並べると、本人がどこを読めばよいか分からなくなります。外出ごとに必要な一枚だけを置き、帰宅したら片づける流れにすると、古いメモを見て混乱する心配も減らせます。

見守り機器は、家族の不安を減らす補助として使う

見守りカメラ、ドアセンサー、緊急通報ボタン、スマートスピーカー、服薬支援アプリなどを使うと、離れている家族が様子を確かめられることがあります。仕事中や買い物中に「今どうしているか」が分からない不安を減らす助けになります。

一方で、機器を置けばすべて解決するわけではありません。本人がボタンを押せない、カメラを嫌がる、通知が多くて家族が疲れる、通信が切れるなど、使ってみて分かる負担もあります。

機器を入れるときは、「監視するため」ではなく、「困ったときに早く気づくため」と伝えるほうが、本人の抵抗を抑えられます。生活空間をすべて映すのではなく、玄関、居間、台所など心配な場所を絞ると、本人の気持ちにも配慮できます。

家族が不安だからといって、通知やカメラを増やしすぎると、今度は家族が画面や通知から離れられなくなります。機器は、家族がずっと見張るためではなく、外出中に何かあったとき気づくための補助として使うほうが続けやすいと思います。

見守りセンサー・IoT家電の導入ポイント

家族が外に出られる時間を作る

一人にしておくのが不安になると、家族は自分の予定を削って家にいる時間を増やしがちです。最初は短い期間のつもりでも、買い物に行けない、仕事に集中できない、友人と会えない、自分の病院へ行く時間も取れない日が続くと、家族は自分の用事や休む時間を後回しにせざるを得なくなります。

本人を大切に思うからこそ家に残っているのに、買い物や通院、自分の休む時間まで後回しになる日が続くと、気持ちに余裕がなくなります。やさしく接したいと思っていても、外に出られない不満や疲れが重なると、声の調子が強くなる日も出てきます。

家族が外出する時間を少しでも確保するために、買い物を配達に替える、親族に短時間だけ来てもらう、本人が落ち着いている時間帯に用事をまとめる、デイサービスや訪問介護を使う、近所の人に緊急時だけ連絡してもらうなど、家庭に合う組み合わせを考えます。

一つの方法だけで支えようとすると、予定が合わない日や本人の様子が変わった日に、家族が急いで対応しなければならなくなります。午前中はデイサービス、夕方は家族の電話、夜は玄関センサーというように、いくつかの支えを組み合わせておくと、外出中の心配を減らせます。

「一人で大丈夫」と言う本人への伝え方

本人が「一人で大丈夫」と言うとき、その言葉には自立したい気持ちや、家族に迷惑をかけたくない気持ちが含まれているかもしれません。家族が「危ないからだめ」と返すと、本人は自分の力を否定されたように感じることがあります。

伝えるときは、「一人では危ないから」とまとめて言うより、「買い物の間だけ、電話に出られるようにしておきたいです」「薬の時間だけは一緒に確かめてから出かけますね」「転ぶと心配なので、出かける前にトイレへ行っておきましょう」と、具体的な行動にして伝えます。

本人に任せる部分と、家族が支える部分をはっきりさせると、過度に干渉している印象を少し和らげられます。「留守番はお願いするけれど、火の元と薬は家族が出る前に確かめる」というように伝えると、本人の自尊心を守りながら、家族も安心して外出する準備ができます。

まとめ

高齢の家族を一人にしておくのが不安になったとき、家族が心配しすぎているとは限りません。転倒、火の元、薬、外出、電話、トイレなど、気になる出来事が一つでも重なると、短い外出でも落ち着かなくなるのは自然なことかと思います。

不安を「一人にできるか、できないか」だけで考えると、家族も本人も苦しくなります。火を使わなくて済む準備をしてから出る、薬は一回分だけ出す、トイレまでの床を片づける、戻る時間を紙に書く、電話や見守り機器を本人が使える形にするなど、気がかりな部分から一つずつ変えていきます。

家族が外出できない生活が続くと、介護する側の疲れも大きくなります。本人を一人にする時間をゼロにすることだけを目標にせず、本人が家で過ごす間の危険を減らしながら、家族が買い物や仕事、自分の通院に出られる時間も残せる形を作っていきます。

参考資料

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