水分をなかなか摂らないときの工夫

高齢になると、のどの渇きを感じにくくなったり、トイレが近くなることを気にして水分を控えたりすることがあります。家族としては心配になりますが、「もっと飲んで」と強く言っても、なかなか習慣は変わりません。ここでは、無理なく水分を摂るための工夫や、普段の生活で取り入れやすい方法について考えてみます。

なぜ高齢者は水分を摂らなくなるのか

のどの渇きを感じにくくなる

加齢とともに、渇きを感じるセンサーが弱くなっていきます。「飲みたい」と思う前に体が脱水に近づいてしまうこともあり、本人には気づきにくい点が特徴です。

トイレを気にして控えてしまう

夜中のトイレや頻尿を心配し、水分を意識的に減らす方もいます。特に冬場は寒さも相まって、ますます控える傾向が出やすくなります。

飲み物そのものが負担に感じる

冷たい飲み物が飲みにくい、味が単調で飽きる、飲み込みづらいなど、身体的な理由も関係しています。水を飲むことが「大変」と感じられる場合もあります。

無理なく水分を増やすための工夫

温かい飲み物に置き換えてみる

冷たい水は飲みにくくても、白湯や麦茶を温めたものなら飲みやすいことがあります。体がほっとする温度は、飲む量の増加につながることが多いです。

一度にたくさん飲ませようとしない

コップ1杯を一気に飲むのは負担になります。小さめのカップにして、「少しずつ」「こまめに」を心がけると取り入れやすくなります。
テーブルに小さめのカップを置いておくなど、目に入りやすい場所に置くことを意識してみます。

好きな味の飲み物を取り入れる

味がある方が飲みやすい方も多いため、麦茶、ほうじ茶、スポーツドリンクの薄めたもの、フレーバーウォーターなど、本人が飲みやすい味を選べるようにすると続けやすいかと思います。

ゼリー飲料やスープを「水分源」として活用

水やお茶を飲まない場合は、ゼリー飲料、味噌汁、スープ、ポタージュなどの食品から水分を補う方法もあります。特に味噌汁は普段の食事に自然に取り入れられるため、意識しなくても水分量が増える点がメリットです。

果物や水分の多い食材をメニューに入れる

みかん、梨、スイカ、ゼリー、ヨーグルト、煮物など、水分量の多い食品を取り入れると、自然と水分摂取につながります。食べることの方が楽に感じられる方には向いている方法です。

生活環境でできる工夫

目につく場所に飲み物を置いておく

リビング、寝室、ダイニングなど、よく使う場所に飲み物を置くだけでも効果があります。視界に入ることで、「飲んでみようかな」という気持ちが芽生えやすくなります。

家族が一緒に飲む

「そろそろ飲もうか」と声をかけるより、一緒に飲み物を用意して「私も飲むから、一緒にどう?」と自然な流れをつくるほうが受け入れられやすい場面があります。

トイレの不安を軽減する工夫をする

水分を控える理由がトイレの場合、動線を整える、夜間照明を置く、暖房を調整するなど、環境を整えるだけで安心感が生まれます。

本人の不安が減るほど、水分を控える必要も薄まっていきます。

脱水を防ぐために知っておきたいこと

早めの兆候に気づく

脱水は急に起きることもあるため、次のようなサインがあれば注意が必要です。

  • 皮膚や口の乾燥
  • 尿量の減少・濃い尿
  • めまい・ふらつき
  • 食欲低下
  • 表情の変化・元気がない

こまめに声をかけながら見守る

強制する必要はありませんが、日中のどこかで「このくらい飲んでいれば安心かな」と感じられるラインを意識して、ゆるやかに支えていく形が現実的です。
季節や体調によって目安量は変わるため、無理のない範囲で続けることが大切かと思います。

終わりに

水分をなかなか摂らない背景には、本人の不安や身体の変化が関わっていると考えられます。
家族が寄り添いながら、小さな工夫を取り入れてみることで、自然と飲める量が増えることがあります。その人にとって心地よいペースの維持を意識することが鍵になるかと思います。

参考資料

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