高齢になると、水分不足が起きても本人が気づきにくくなるということが起こりえます。加齢に伴い「喉の渇き」を感じる力が弱まるのと、体に水分を蓄える機能そのものも低下してしまうためです。
暑い夏場はもちろん、乾燥する冬場や室内であっても脱水症のリスクは常にあります。脱水が進むと、ぼんやりする、足元がふらつく、食欲が落ちるといった変化が現れ、重症化すると意識障害や転倒による骨折にもつながりかねません。日頃から、無理のない水分の摂り方を見直しておくことが大切になります。
高齢者が脱水になりやすい理由
高齢の方は、若い頃に比べて筋肉量が減少しています。実は筋肉は「体内の水分を蓄えるタンク」のような役割を果たしているため、筋肉が減ると蓄えられる水分の予備量も少なくなってしまうとされます。
さらに、喉の渇きを自覚しにくいため、本人はいつも通り過ごしているつもりでも、気づかぬうちに深刻な水分不足に陥っていることがあります。また、トイレを気にして水分を控えたり、食事の量が減っていたりする方も、脱水のリスクが非常に高くなります。
脱水が疑われる「小さなサイン」
脱水症は、いきなり重い症状が出るとは限りません。最初は、以下のような日常の些細な変化として現れます。
- 口の中が乾いている、つばがネバつく
- 尿の回数が減った、色が濃くなった
- 皮膚の張りがなくなり、カサカサしている
- 手足が冷たく、なんとなく元気がない
ご家族が最も気づきやすいのは普段との違いです。急に会話が少なくなった、食事のペースが落ちた、動くのを嫌がって横になってばかりいる……といった様子が見られたら、まずは水分不足を疑ってみる必要があります。
無理のない毎日の「飲み方」
水分は、一度にたくさん飲むよりも、日中に何度か分けて摂るほうが体に吸収されやすく、習慣化もしやすくなります。「起きた時」「食事の時」「薬を飲む時」「入浴前後」「外出の前後」など、タイミングを決めてコップ一杯の飲み物を出すようにしましょう。ご本人があまり自分から飲もうとしない場合は、喉が渇いたか尋ねるよりも、「一緒に少しお茶にしましょう」と声をかけて、手元に飲み物を置いてあげるほうがスムーズかと思います。
※ただし、心臓や腎臓の持病で水分制限を受けている方の場合は、必ずかかりつけ医の指示に従ってください。
飲み物と器の選び方
普段の水分補給には、水や白湯、麦茶、ほうじ茶など、カフェインの少ない飲み物が適しています。緑茶やコーヒーを好む方も多いですが、それらには利尿作用があるため、他の飲み物とバランスよく組み合わせるのが理想的です。また、冷たい飲み物を好まない方には、常温や少し温かい飲み物のほうが喜ばれることもあります。
意外な盲点として、「コップが重い・持ちにくい」という理由で飲む量が減っているケースもあります。軽くて持ち手がある容器に替えるだけで、ご自身で飲める量が増えることもあります。
「食事」からも水分を補給する
水分は飲み物だけでなく、食事からも補うことができます。お味噌汁やスープ、煮物、果物、ゼリーなどは、効率よく水分を摂れる食品です。特に食が細くなっている方の場合は、食事の中に水分の多いメニューを取り入れることで、無理なく補給しやすくなります。食事量が減っている時は、同時に水分も不足していると考え、食事と水分をセットでケアすることが大切です。
特に注意が必要な場面
脱水症は夏の暑さだけが原因ではありません。「発熱・下痢・嘔吐・食欲不振」がある時は、短期間で急激に水分が失われます。また冬場でも、暖房の効いた室内で過ごしていると、自覚のないまま皮膚や呼気から水分が逃げていきます。入浴後や起床時など、特に乾燥しやすいタイミングでの補給を意識しましょう。
早めに医療機関へ相談すべきケース
水分を摂らせても元気が戻らない、ぐったりしている、受け答えがはっきりしない、尿がほとんど出ないといった状態は危険なサインです。高齢者の脱水は、意識障害や循環器への負担に直結しやすいため、決して楽観視してはいけません。「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに医療機関へ相談してください。
ご家族でできる見守りの工夫
ご家族ができる工夫は、決して特別なことではありません。飲み物を常に目につく場所に置く、決まった時間に声をかける、飲んだ量が把握しやすいように決まった水筒やコップを使うといった、ちょっとした仕組み作りが大きな予防になります。脱水は、早期に気づけば防ぐことができますので、ご本人が無理なく、美味しく水分を摂れる方法を一緒に見つけてあげてください。

