「最近、親の物忘れがひどくなった気がするけれど、病院に連れて行くのは勇気がいる」「高額な検査費用がかかるのでは?」と不安に思われるご家族は少なくありません。
もの忘れ外来は、単に認知症の有無を判定する場所ではなく、「治療可能な病気が隠れていないか」を突き止め、今後の生活を安心させるための相談窓口です。実際に行われる検査の流れと、窓口で支払う費用の目安を分かりやすく整理しました。
もの忘れ外来で行われる「4つの基本検査」
診断は、一つの検査だけで決まるわけではありません。以下の4つのステップを組み合わせて、多角的に判断します。
① 問診(ヒアリング)
医師や相談員が、現在の生活状況を聞き取ります。「いつ頃から」「どのような場面で」困っているかが重要です。本人は無意識に取り繕ってしまうことがあるため、日頃の様子を知るご家族の同席が欠かせません。
② 認知機能検査(心理テスト)
記憶力や判断力を測る簡単なテストです。ペンで図形を描いたり、言葉を覚えたりする内容で、10〜20分程度で終わります。
- HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール): 日本で最も一般的なテスト。
- MMSE: 世界的に使われている、より広範囲な認知機能テスト。
③ 血液検査
意外かもしれませんが、血液検査は非常に重要です。なぜなら、ビタミン欠乏症や甲状腺機能低下症など、「治療すれば治る物忘れ」が隠れていないかを確認するためです。
④ 画像検査(MRI・CT)
脳の萎縮の程度や、脳梗塞、脳出血、正常圧水頭症などの異常がないかを確認します。これにより、アルツハイマー型なのか、血管性なのかといった「原因疾患」の特定に繋げます。
費用の目安(健康保険適用・3割負担の場合)
もの忘れ外来は基本的に保険診療です。初診時に画像検査まで含めて一通り行う場合、3割負担の方で「合計 10,000円〜15,000円程度」が一般的な目安です。
| 検査・項目名 | 3割負担の目安 | 1割負担の目安 |
|---|---|---|
| 初診料・再診料 | 約 850円 〜 | 約 280円 〜 |
| 認知機能検査(心理テスト) | 約 240円 〜 1,500円 | 約 80円 〜 500円 |
| 血液検査 | 約 2,000円 〜 4,000円 | 約 700円 〜 1,300円 |
| MRI検査 | 約 5,000円 〜 8,000円 | 約 1,700円 〜 2,700円 |
| CT検査 | 約 3,000円 〜 5,000円 | 約 1,000円 〜 1,700円 |
※医療機関の規模や、追加される検査項目によって変動します。
受診前に知っておきたい留意点
診断は「一度」で決まらないこともある
もの忘れ外来を受診したからといって、その日にすぐ「認知症です」と断定されるとは限りません。軽度認知障害(MCI)などの疑いがある場合、数ヶ月〜半年後に再検査を行い、経過を見て判断することもあります。焦らず、段階的に現状を把握することが大切です。
「治る物忘れ」を見逃さないために
物忘れの原因が、実は脳の腫瘍や慢性硬膜下血腫だった場合、手術で劇的に改善することもあります。もの忘れ外来は、こうした「見逃してはいけない原因」を排除するためにも非常に重要な役割を持っています。
まとめ:受診は「今の安心」と「将来の備え」のため
もの忘れ外来への受診は、本人の自尊心を傷つける行為ではありません。むしろ、正しく状態を知ることで、本人が自信を失わずに過ごすための環境を整えたり、介護保険などの公的支援を早期に活用したりするための第一歩です。
もし受診をためらわれているなら、まずはかかりつけ医や、お住まいの地域の地域包括支援センターで「物忘れが気になっている」と相談してみてください。適切な専門医療機関の紹介や、受診に向けた家族の心構えについて、力強いアドバイスがもらえます。
参考資料
- 厚生労働省「認知症の診断・鑑別診断」
- 日本認知症学会「認知症疾患診療ガイドライン」

