介護保険で利用できる施設介護サービス一覧

介護保険のサービスには「自宅で利用する居宅サービス」と「施設に入所して受けるサービス」の大きく2つの種類があります。そのうち施設に入所して受けるサービスは、介護が必要になった高齢者が安全に生活を続けられるように支える仕組みで、介護保険制度のなかでも重要な位置を占めています。

利用対象は要介護1以上の認定を受けた方で、要支援1・2の方は原則として施設サービスを利用できません。長期的な入所から、短期間の滞在まで、状況に応じたさまざまな選択肢があります。ここでは、令和7年(2025年)時点で利用可能な主要な施設介護サービスを整理してみます。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)

特別養護老人ホーム(特養)は、介護度の高い高齢者が入所して、生活全般の介護を受けられる施設です。

  • 対象者:原則として要介護3以上。やむを得ない事情がある場合、要介護1・2でも特例的に入所できることがあります。
  • サービス内容:食事・入浴・排泄などの身体介護、日常生活の支援、機能訓練、健康管理など。
  • 特徴:長期的に暮らせる「終の住処」となる場合が多い施設。公的色が強く、費用は比較的抑えられています。
  • 利用料の目安:介護サービス費の自己負担(1〜3割)に加え、居住費・食費が必要。所得に応じて補足給付(負担軽減制度)を受けられることもあります。

特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)の基礎知識

介護老人保健施設(老健)

介護老人保健施設(老健)は、在宅復帰を目指すための中間施設として位置づけられています。

  • 対象者:病院での治療を終え、リハビリや生活支援を受けながら在宅生活への復帰を目指す要介護者。
  • サービス内容:医師や看護師による医療ケア、理学療法士や作業療法士によるリハビリ、日常生活支援。
  • 特徴:入所期間は原則3か月〜半年程度。退所後の在宅生活や施設生活に向けた準備の場。
  • 利用料の目安:介護サービス費の自己負担(1〜3割)+居住費・食費。医療保険との連携が強いのが特徴です。

介護老人保健施設(老健)の基礎知識

介護医療院

介護医療院は、医療と介護を一体的に受けられる新しいタイプの施設で、2018年から本格的に整備が始まりました。

  • 対象者:長期にわたり療養が必要な要介護高齢者。医療ニーズと生活支援の両方を必要とする方。
  • サービス内容:医師・看護師による医療ケア、生活全般の介護、機能訓練、看取り支援。
  • 特徴:従来の「療養病床」に代わる施設であり、老健や特養と比べて医療体制が強化されています。
  • 利用料の目安:介護サービス費の自己負担(1〜3割)に加え、食費・居住費。医療行為が多い場合はやや高額になりやすいです。

短期入所サービス(ショートステイ)

ショートステイは、数日から数週間程度、施設に宿泊して介護サービスを受ける仕組みです。

  • 対象者:在宅で介護を受けている要介護者。家族が一時的に介護できないときや、レスパイト(介護者の休養)のために利用されます。
  • サービス内容:食事・入浴・排泄などの介護、機能訓練、健康管理。医療ニーズに対応できるタイプもあります。
  • 種類
    短期入所生活介護(生活支援中心のショートステイ)
    短期入所療養介護(医療ケアやリハビリが充実したショートステイ)
  • 利用料の目安:介護サービス費の自己負担(1〜3割)+食費・居住費。利用日数に応じて変動します。

認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)

認知症の方が少人数で共同生活を送りながら介護を受ける施設です。

  • 対象者:要支援2または要介護1以上で、認知症の診断を受けている方。原則として住んでいる市町村にある事業所のみ利用可能です。
  • サービス内容:食事・入浴・排泄介助、掃除や調理などを職員と一緒に行う生活支援、機能訓練。
  • 特徴:1ユニット9人以下の少人数制。家庭的な雰囲気で生活でき、認知症の進行予防や安心感につながります。
  • 利用料の目安:介護サービス費の自己負担(1〜3割)+食費・居住費。地域によって差があります。

地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(地域密着型特養)

地域密着型特養は、定員29人以下の小規模な特別養護老人ホームです。

  • 対象者:原則要介護3以上。住んでいる市町村に設置された施設のみ利用可能。
  • サービス内容:生活全般の介護、機能訓練、健康管理。
  • 特徴:少人数で家庭的な雰囲気があり、地域とのつながりを大切にしている施設。
  • 利用料の目安:通常の特養と同様に、介護サービス費+食費・居住費。

その他の関連サービスとの関係

施設介護サービス以外にも、地域密着型の「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」や、介護保険外サービスとして「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などがあります。これらは施設サービスと組み合わせて検討されることが多いため、違いを理解しておくことが必要になります。

利用までの流れ

  1. 要介護認定の申請を行う
  2. 認定結果をもとにケアマネジャーがケアプランを作成
  3. 希望する施設に申し込み、面談や書類審査を経て入所決定
  4. 入所契約後、サービス利用開始

施設によっては待機者が多く、入所までに時間がかかる場合もあるため、早めの情報収集と申し込みが重要です。

まとめ

介護保険の施設サービスは、介護度や目的によって選ぶ施設が変わります。長期的に安心して暮らす場を探すのであれば特養、在宅復帰を目指すなら老健、医療ニーズが高ければ介護医療院、といったように特徴があります。さらに短期間のショートステイや、認知症の方が家庭的な環境で暮らすグループホームなど、多様な選択肢が用意されています。

どの施設を選ぶにしても、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談するのが第一歩です。自分や家族に合った施設を選び、安心できる暮らしの形を整えていくことが大切になります。

参考

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