親の介護が必要になったとき、きょうだい間で「誰がどこまで介護を担うか」「費用や手間の分担」「意思決定のあり方」などで意見が分かれ、気まずさやトラブルにつながることがあります。しかし、お互いの価値観や事情を尊重しながら、あらかじめ話し合いや役割分担を決めておくことで、無用な争いを避けやすくなります。ここでは、きょうだい間のトラブルを予防するための考え方と具体的な方法を考えてみます。
なぜトラブルが起きやすいのか
価値観・生活スタイルの違い
子どもそれぞれが異なる環境やライフステージにあり、仕事・家庭の状況も異なります。たとえば、近くに住む人、遠方に住む人、仕事が忙しい人、時間に余裕がある人などです。親の介護に対する考え方・期待するケアの内容にもズレが出やすいため、負担や思いの差が起きやすくなります。
情報や負担の偏り
介護の手続き、サービス内容、費用、親の状態などの情報を共有せず、「誰が何をしているか」が見えないまま進めると、不公平感や不満の原因になります。また、特定のきょうだいだけに負担が集中すると、疲れやストレスが溜まりやすくなります。
親の気持ちや尊厳への配慮がズレる
介護の必要性や方法について、きょうだい間で「親にとって何が最善か」という考えが異なることがあります。親の意見を尊重するか、できるだけ負担を減らすか、医療的な対応を優先するか…判断が分かれやすく、衝突につながることがあります。
トラブルを防ぐための基本の考え方
情報をオープンに、共有する
親の健康状態、介護サービスや費用、家族の生活状況などをできるだけ透明にすることが大切です。「誰が何をするか」「費用負担の分担」「今後の方向性」なども含め、記録して共有することで不公平感を防ぎやすくなります。
早めに「役割分担」「意思決定の方法」を話し合う
親の介護が必要になる前、または介護が始まったばかりの段階で、きょうだいで話し合う機会を持つとよいかと思います。負担や責任を曖昧なままにせず、役割(例:通院付き添い、家事のサポート、費用の負担、見守りなど)を決めておくことがポイントです。
親の意思を尊重し、定期的に確認する
親の意向や体調は変化します。最初に決めた内容が合わなくなることもあるため、定期的にきょうだいで集まって「今の状況」「要望」「対応のあり方」を話す時間をつくるとよいかと思います。
具体的にできる工夫・手順
① 書面または表で「介護プラン・負担分担表」を作る
誰がどのサービスやサポートを担当するか、費用はどう分担するか、頻度はどれくらいかなどを表にして明らかにします。後から「聞いていない/知らなかった」という誤解を防げます。
② 第三者を交えて話す機会を持つ
地域の公的機関、ケアマネジャー、相談窓口など、第三者にサポートを依頼することで、中立的な立場から話を整理できます。きょうだい間で感情が先走りがちなときにも、冷静な話し合いがしやすくなります。
③ 情報を共有する仕組みを決める
「介護ノート」を用意して体調や服薬、予定を書き留めたり、共有アプリを使って連絡や記録を残す方法もあります。誰が何をしたかが見えるようになると、負担の偏りが起きにくくなります。
④ それぞれの事情・負担に応じて柔軟に対応する
仕事や家庭の状況は人それぞれで、無理をして全員に同じ負担を求めるのは難しいことが多いです。できる人が少しずつ助け合う、「完璧」ではなく「続けやすさ・負担の分散」を重視する姿勢が大切です。
トラブルになりやすいパターンと対策
「遠くに住んでいる → あまり手伝えない」パターン
近くに住むきょうだいだけが介護を負担し、不公平感が出ることがあります。この場合、「金銭的なサポート」「月1回の訪問」など、距離があってもできる形で参加できるよう話すのが有効です。
「親の意思があいまい → きょうだいで意見が分かれる」パターン
親の希望が定まっていないと、きょうだい間で対応が揺れやすくなります。そんなときは、親ときょうだいを交えた話し合いを設け、「本人が望むこと」「重視すること」を確認することが大切です。
「負担が長期化 → 疲れ・不満がたまる」パターン
介護は期間が長く続きやすく、休みなく続けると負担が積もります。このようなときは、「ヘルパー利用」「交代制にする」「外部サービスを取り入れる」など、無理のない方法を検討するようにしましょう。

