一人で抱え込まないための「介護の分担」の考え方

親の介護が必要になったとき、家族のうち誰か一人に負担が集中してしまうことがあります。気づけば生活や仕事が圧迫され、心身の疲れが大きくなるケースも少なくありません。

介護は一人が抱え込むよりも、家族や専門職、地域のサービスなど、複数の力を組み合わせることで続けやすくなると考えられます。ここでは、無理なく分担するための視点や工夫について整理してみます。

なぜ「分担」が必要なのか

介護は“長期戦”になりやすい

介護は数か月で終わるものではなく、数年単位で続くことがあります。最初の気力や体力に任せて一人で続けてしまうと、途中で大きなストレスや疲れが溜まりやすくなります。早い段階で分担の仕組みを作っておくことが結果的に親の生活を守ることにもつながります。

家族の状況はそれぞれ違う

きょうだいそれぞれが異なる生活環境にあり、仕事・家庭の事情も異なります。全員が同じ役割を担うのは難しいため、「できることを持ち寄る」という考え方が現実的です。

どのように分担を考えるか

① 介護のタスクを「見える化」する

通院の付き添い、買い物、配食サービスの手配、掃除や洗濯、服薬チェック、金銭管理、見守り連絡など、介護には多くの作業が含まれます。まずは何が必要なのかを一覧にして、負担が偏っていないかを把握することが必要です。

② 家族で「できること・できないこと」を共有する

仕事が忙しい人、遠方に住んでいる人、小さな子どもがいる人など、事情はさまざまです。それぞれが無理のない範囲で関わり、役割を明確にすると安心して協力しやすくなります。

③ 実際の介護以外でも分担できる

介護は身体的なケアだけでなく、次のような“間接的な支援”でも分担できます。

  • 書類手続き・行政申請を担当する
  • 費用面のサポートを一部担う
  • 週末だけ買い物や掃除を行う
  • オンライン通話で様子を聞く

「直接介護ができない=何もできない」ではないため、できる範囲で関わる形を話し合っておくとスムーズです。

外部サービスも分担の一部として考える

ケアマネジャーに相談する

介護保険サービスの組み立てや連絡調整などを専門職が担ってくれます。家族だけで考えるよりも、負担の軽減につながることがあります。

訪問介護・デイサービスを利用する

入浴介助、食事づくり、掃除、生活リズムの支援など、家庭で抱え込みやすい部分を補うことができます。サービス利用は「手を抜く」のではなく、「続けるための工夫」として考えられます。

ショートステイ(短期入所)

数日〜数週間の宿泊が可能なサービスで、介護者が体調不良のとき、仕事の繁忙期、旅行や冠婚葬祭などで家を空けるときに役立ちます。「一時的に丸ごと任せたい」という場面で大きな助けになります。

地域の支援(地域包括支援センター・社協など)を頼る

相談窓口や生活支援サービス、見守りの仕組みなどを活用することで、家族が過度に負担を抱えずにすむ場合があります。

見守り支援(自治体・民間)

次のような軽度の見守りを提供するサービスもあります。

  • 定期的な電話や訪問で安否確認
  • 配食サービスに付随する安否確認
  • センサーや見守りカメラによる状態把握

「一人にしておくのが不安」「急な変化に気付ける体制がほしい」場面で、家族の精神的負担が大きく減ります。

きょうだい間でトラブルを避けるための工夫

情報を共有し、記録を残す

親の状態、利用しているサービス、支援にかかる費用などを共有することで、「誰が何をしているか」が明確になり、不公平感が生まれにくくなります。共有ノートやアプリを使う方法もあります。

役割の見直しを定期的に行う

状況が変われば無理の出方も変わります。定期的に見直して、お互いが続けられる形に調整することが大切です。

一人で抱え込まないために

介護は、誰か一人が背負うものではないと思います。家族・専門職・地域の支援を組み合わせることで、無理のない形をつくりやすくなります。完璧を目指すよりも、「続けられる形を一緒に考える」という視点が心身の負担を軽くし、親にとっても安定した生活につながるのではないかと思います。

参考資料

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