介護保険制度では、要介護状態の前段階として「要支援1」「要支援2」の区分があります。これらは、日常生活の一部に困難が生じ始めている状態を指し、すぐに介護が必要というほどではないものの、適切な支援がなければ要介護状態へ進行する可能性があると判断された人が対象です。
要支援と認定されると、介護予防サービスを利用することができます。ここで重要になるのが「介護予防のケアプラン」です。
介護予防ケアプランの目的と特徴
介護予防のケアプランは、利用者が可能な限り自立した生活を維持できるように支援するために作成されます。要介護者向けのケアプランと異なり、「できることを増やす」「衰えを防ぐ」といった前向きな目的を重視している点が特徴です。
たとえば、「買い物に行けないから代行してもらう」のではなく、「少しの距離なら自分で歩いて買い物に行けるようにする」といった方針がとられます。そのため、リハビリや体力維持、社会参加などを重視した内容が盛り込まれることが多くなります。
作成の流れと関わる機関
介護予防のケアプランは、地域包括支援センターが作成の主体になります。市区町村から委託を受けたセンターの保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などが中心となって、次のような手順で進められます。
- 利用者本人や家族との面談
- 日常生活動作や心身の状況の確認(アセスメント)
- 生活上の課題や目標の整理
- 必要なサービスの選定と頻度の調整
- ケアプランの作成と説明・同意
- 定期的な見直しと更新
ケアプランの内容は、利用者の希望や生活環境を踏まえて柔軟に調整されます。また、状態が変化した場合には随時プランを見直すことが可能です。
盛り込まれる主なサービス内容
介護予防のケアプランには、次のようなサービスが含まれることがあります。
- 通所型サービス(運動機能向上や栄養改善など)
- 訪問型サービス(生活支援・見守り)
- 地域の介護予防教室やサロンへの参加
- フレイル予防を目的としたリハビリプログラム
- 口腔ケアや認知症予防に関する支援
サービスは市区町村が定める「総合事業」の中で提供される場合が多く、民間事業者のほか、NPOや地域住民による活動など多様な主体が関わります。
要支援では受けられない主なサービス
要支援状態では、身体介護や医療的ケアを中心とした専門性の高いサービスの一部が利用対象外となっています。代表的なものは次のとおりです。
- 特別養護老人ホームへの入所(原則として要介護3以上が対象)
- 訪問看護における医療的管理(医師の指示によるもの)
- 介護福祉士による排泄・入浴などの身体介護中心型の訪問サービス
- 夜間対応型訪問介護
- 小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護
- ショートステイでの中重度対応サービス
これらのサービスは、要介護状態でなければ利用できないことが多く、要支援の段階では基本的に介護予防や軽度の生活支援に限られています。
ケアプランを有効に活用するために
要支援の段階でのケアプランは、「いま必要な支援」よりも、「この先も元気で過ごすための備え」という側面が強くなります。本人の参加意欲や生活目標をしっかり反映させて、自立意欲や参加意識を高めることが鍵になります。
プラン内容は定期的に見直され、利用者の状況に応じた改善が図られるため、利用者自身や家族が積極的に意見を伝えることが重要です。
また、サービス担当者会議などの場では、プランの内容や効果について話し合われるため、本人の希望や不安、将来への考えなども共有すると、より満足度の高い支援が実現しやすくなるかと思います。