介護老人保健施設(老健)の基礎知識

介護老人保健施設(通称:老健)は、病院と自宅の中間に位置する役割を持つ介護保険施設です。医療的な管理のもとでリハビリテーションや日常生活の介護を受けながら、自宅や地域での生活に戻ることを目的としています。入所期間はあくまで「在宅復帰」を目指すための中期的な利用が中心で、長期的な住まいという位置づけではありません。

対象者

老健を利用できるのは、原則として 要介護1以上 と認定された高齢者です。特養(特別養護老人ホーム)が要介護3以上を原則としているのに比べると、利用対象は広めです。

対象となるのは以下のような人です。

  • 病院を退院した後、すぐに在宅生活に戻るのが難しい人
  • 在宅生活を続けているが、リハビリや医療的ケアを一定期間受けたい人
  • 自宅での生活を目標に、集中的に機能訓練を受けたい人

提供されるサービス

老健の特徴は、医療・介護・リハビリの3つが一体的に提供される 点です。

  1. 医療サービス
    医師や看護職員が配置され、日常的な健康管理や服薬管理、必要な医療処置を行います。慢性的な病気を持つ高齢者にも安心できる体制です。
  2. 介護サービス
    食事、入浴、排泄、着替えなど、日常生活に必要な介助が受けられます。生活のリズムを整えるとともに、在宅生活を意識した支援が行われます。
  3. リハビリテーション
    理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが関わり、身体機能や日常動作、言語機能の回復・維持を目指します。退院後のリハビリの場として利用されるケースも多いです。
  4. 家族支援
    在宅復帰に向けて、介護方法の指導や相談支援も行われます。家族が安心して在宅介護に取り組めるようにサポートする仕組みです。

利用期間と在宅復帰

老健は「自宅に戻ること」が基本方針のため、利用期間は数ヶ月から1年程度が目安です。厚生労働省の調査でも、平均在所日数は約8か月前後となっています。長期入所を希望する人もいますが、あくまでリハビリを通じた在宅復帰が目的であるため、特養や有料老人ホームのように「終の住処」として利用することはできません。

利用料の目安

老健の費用は、介護度や居室のタイプ、所得区分によって異なります。

  • 介護サービス費用:介護保険の自己負担(1割~3割)
  • 居住費・食費:部屋の種類(多床室・個室)や所得により異なる
  • 月額の目安:おおむね8万〜12万円程度

低所得者の場合は「補足給付制度」により費用の軽減を受けられることがあります。

老健の特徴と注意点

特徴

  • 医師が常勤しており、医療体制が比較的整っている
  • リハビリに力を入れており、自宅復帰を重視している
  • 要介護1以上なら利用可能で、比較的幅広い人が対象となる

注意点

  • 在宅復帰が原則のため、長期間の入所は想定されていない
  • 医療依存度が高い場合、受け入れが難しいこともある
  • 入所希望者が多く、地域によっては待機が発生する

まとめ

介護老人保健施設(老健)は、病院と自宅の間をつなぐ大切な役割を持つ施設です。医療的な支援とリハビリ、生活介護を受けながら在宅復帰を目指せる点が特徴です。ただし、あくまで「自宅に戻ること」を前提とした施設であるため、長期的な生活の場として利用するには適していません。退院後のリハビリや一時的な入所先として活用し、並行して将来的な生活の場を検討していくことが重要です。

参考

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